#印鑑 法務省が印鑑の意味を間違えている例
ハンコについての話題です。
ハンコと言えば、一般的には、固くて、丸くて、細長くて、先っぽに裏文字が彫られている、3次元の物体を言いますね。こんな感じ。
他にゴム印などもありますが、今日は無視。
これを、正式には印章と言います。
でも、一般の人はハンコと呼べば良いので、堅苦しく印章なんて呼ぶ必要はありません。ただ、蘊蓄として覚えておきましょう。
この印章の利用方法は?分かりますよね。
印章の裏文字が彫られている面に、朱肉に押付け、インクなどの色の着いた物質を裏文字のとおりに塗りつけて、紙などの対象物に押しつけて、対象物に、裏文字の裏文字、つまり、表文字の模様を付けることです。
この作業を、押印または捺印と言います。
一般的には「ハンコを押す」で十分です。ただの蘊蓄です。
では、押印によって紙に転写された模様の名称は何でしょう。
それは、印影と言います。
一般的な用語は、残念ながら思いつきません。
その契約書に印影はありますか?とは聞かずに
その契約書にハンコは押してありますか?と言うのが普通でしょう。
ここまでをまとめて見ましょう。
印章=ハンコ。「3次元の物体」
押印、捺印=ハンコを押す「行為」
印影=押印によって出来た「2次元の模様」
とそれぞれ、物体と行為、2次元と3次元、全く異なる概念だと言うことが、ご理解戴けましたか。
さて、まだ印鑑が出てきません。
結論を言うと、印鑑は、上記3つの内、印影の一種です。
印章=ハンコのことを、印鑑と思っている人が大半でしょうが、それは厳密には誤りです。
印鑑は2次元の模様なのです。へーー!
印影と印鑑 は、何が違うのか。
印鑑は、特別な印章を使って、特別な場面で押印した印影です。
「特別な印章」とは、実印のことです。
「特別な場面」とは、市役所、区役所などで、印鑑登録をするときです。
人は、何本か持っているハンコの中から、お気に入りの1本を選んで、これを実印にしよう。と決断します。
そのハンコを持って役所に行って、このハンコを実印にしたいので印鑑登録をお願いします。と申請します。
役所は、そのハンコで押印し、印影をとって、それを印鑑と登録します。
これで、そのハンコは、晴れて実印に昇格しました。
ここ、大事ね。
つまり、役所に、実印から転写した印影ですよ。と登録された印影が印鑑です。
ハンコ一個につき、印鑑は一個だけ。
人ひとりにつき、印鑑は一個だけです。
印影の一種ですから、2次元の模様です。
「印鑑証明書」という書面があります。
昔、昔は、印鑑証明書の申請用紙に「実印押印用の枠」があり、そこに申請者が実印で押印して印影を転写して申請し、役所が、役所に保管している印鑑と照合して、同じ印影であることを確認して、2つの印影は同じものである。と証明書を発行していました。
東京弁護士会でも、職印の登録制度があります。
ボクの知る限り、今でも、証明書は上記と同じように、申請者が押印して印影を転写し、弁護士会に保管してある印影と照合して、証明書を発行しています。
役所の方は違います。
最近は、コンピュータ化が進んでいますから、登録した印鑑をコンピュータに保存しています。
住民が印鑑証明書を申請したら、コンピュータから印鑑(模様)をプリントアウトして、これが実印で押印された印鑑と同じものです。と証明書を作ります。弁護士会よりスマートですね。
これによりオンラインで繋がっている役所の支所などでも、印鑑証明書を発行することが可能になりました。
最近は、コンビニでも取れるとか?
さて、ここで、もう一回確認です。
印鑑は2次元の模様です。
よろしいですね。
この書面を見て下さい。
法務省のHPからお借りしたものです。
天下の法務省。法律の権化のような役所です(笑)。そこのHPです。
下段の(注3)をご覧下さい。
「登録済みの印鑑を押印してください。」
と2回も書かれています。
この書式は、法人の印鑑登録ですが、理屈は同じです。
「登録済みの印鑑」というものは、役所に保管されています。
形状は、2次元の模様です。
それを、申請書に「押印」することは不可能です。
印鑑をハンコ=印章と間違えているのだと断じざるを得ません。
とても、残念です。