#きらぼし銀行 もやっちまった件

12月9日、きらぼし銀行ジモティー支店に行ってきた。

 

きらぼし銀行は、守谷事務センター(以下「センター」という)があり、相続処理をすべてそこに集約している。

きらぼし銀行としては「センター」に、ボクが必要書類全部の原本を送って、「センター」で間違いないと確認し、コピーを取って、原本を送り返すのが原則形だ。

だが各1通しかない原本類を守谷に送ってしまうと、返送されるまで、他の銀行との手続が進まない。ボクには、原本を送る気なんてサラサラない。微塵もない。

「センター」と協議して、ジモティー支店で原本確認をする段取りを付けた。「センター」もジモティー支店に社内連絡を取り、きのしたさんの相続は原本確認をジモティー支店で行う。と通達してくれた。その際、担当者の名前まで教えてくれた。

当方としては、1日で3つの銀行を回りたいので、窓口に居る時間をなるべく短縮したい。事前に担当者宛に手紙を書き、相続人関係図や、原本ではないがコピーを送って内容を理解して貰う努力をした。

「センター」から、窓口で使う手続書類が届いたので、自宅でそれに記入を済ませ、原本と記入済みの届出書を持ってきらぼし銀行に、乗り込んだ。

事前の準備が万端だったので、窓口に居た時間は30分。ほとんど、原本をコピーする待ち時間だけで済んだ。

こういうふうに、準備通りにことが進むと、心が清々しくなるねえ。

次は「センター」に書類を送って貰って、「センター」の審査が通れば、ボクの口座に送金して貰って、一件落着。

あとは待つだけ。

待てば海路の日和あり。ってね。

 

と思っていた翌々日、つまり今日だが、きらぼし銀行(おそらくセンター)から電話があった。

要点は2点あった。

 

その1 自署が必要?

届け出用紙が事前に届いていたので、自宅で記入を済ませておいた。その際、住所と名前にゴム印を使った。

電話の主が言うには、

「ここは、自署でお願いしたい。行内規定で、自署を貰うことになっている。もう一度書類を送るので・・・」

そこで遮って

「なぜ、自署でなければならないのですか?」と問いただした。

電話主曰わく「窓口のモノが気が付かなかったのが悪いのですが、行内規定で」

「行内規定なんか、どうでも良いんですよ。ゴム印の他に実印を押してますよね。記名押印してあれば、署名と同じ効力があるはずです。商法に規定がありますよね(条文を指摘できないのは、非弁だからだろう)」

「あ、はい」向こうも自信がないのだろう、曖昧な返事だ。

「とにかく、記名押印で充分なはずです。書き直すつもりはありませんから」と押し切った。

 

ちなみに、商法

32条
この法律の規定により署名すべき場合には、記名押印をもって、署名に代えることができる。

銀行の書類が、「この法律の規定により」に包摂されるのか、こまかい議論はしらないが、押し切った方が勝ちだ。

 

 

その2 成立日付はいつ?

 

何度も書いているが、今回の相続手続では、遺産分割協議書ではなく、遺産分割証明書を活用した。

遺産分割証明書が相続人の人数分、つまり6通存在する。6人が、それぞれ自由に作成日付を書き、署名押印して、印鑑証明書を添付している。(正確には、ひとりは外国在住なのでサイン証明)

 

だが、遺産分割協議が整った日は確定している。実際にみんなが集まって協議した事実もある(代理出席もあったが)。

銀行提出書類には、遺産分割の日として、その日を記載した。

 

これに関して電話主は「6通の内、一番最後に作成された日を、遺産分割の日に訂正してくれ」という。

「なぜですか?」当然ながら理由を聞く。

「行内規定で、一番最後の書類の日付とすることになっておりまして」

「あのね、今回は遺産分割協議書じゃなくて、証明書なの。わかる?」

「はい。行内規定で、遺産分割証明書の場合も、遺産分割協議書と同様に扱うことになっておりまして、最後の日付とさせて頂いております」

行内規定、行内規定って五月蠅いなあ。

ちょっと興奮してたので気づかなかったけど、遺産分割協議書では、ひとりひとりが署名押印日を記載することなく、作成日は1日しか書かれない。最初も、最後もない。どんな行内規定なんだ?

 

遺産分割協議書を活用する場合、遺産分割協議が成立したのはいつの日か?

これは、法律解釈問題なのか、事実認定問題なのか、当事者の意思解釈問題なのか?

純化すれば、口頭契約なのか、書面契約なのか?はたまた、第三の考え方が妥当するのか?

 

事実経過を辿れば、通常の場合、相続人全員が集合して遺産分割の協議を行い、全員が合意したら、だれかがそれを遺産分割協議書という書面にまとめ、持ち廻りで署名押印することになるだろう。再度集まって、同時に(連続した短時間内に)、署名押印する場合もあるだろう。

 

民法の一般原則に従えば、契約は口頭で成立する。

遺産分割協議も、全員が合意した時点で口頭で成立した。と考えることもできる。その後の書面作成と署名押印は、ただ形式を整えるだけの行為となる。

 

他方、民法の世界でも、不動産取引など高額な処分行為になると、口頭で合意しただけでは契約は未成立で、契約書に署名押印したときに、双方の意思が最終的に確認された。として、署名作成時を契約成立日をすべし。という場面もある。

その中間的な事案もあろう。

 

遺産分割協議は、おうおうにして高額な財産処分となるので、書面作成日とした方が落ち着きが良いかも知れない。作成日と言っても、持ち廻り署名の場合などは、最終署名者の署名の日。となるだろう。

最後の署名者が署名した時点が、だれもちゃぶ台をひっくり返して、遺産分割の合意を撤回できなくなる限界点だからだ。

こういう解釈をすれば、行内規定も意味を持ってくる。

 

しかし、遺産分割協議書の作成日付が、いつの時点を示しているのかは、事案によって様々である。

書面作成者が、口頭合意の日付を記入してしまったかもしれない。

ひとり目の署名者が、署名日を記入したかも知れない。

最後の署名者が、仕上げに日付を書き込んだかも知れない。

可能性は無限にある。

法律的には、口頭主義なのか、書面行為なのか、という面倒な議論があっても、実際には、だれかが書き込んだ日付が、事実関係とは無関係に遺産分割協議の成立日になる。それが遺産分割協議書というものだ。

 

ところが。

遺産分割証明書になると、話は変わってくる。

証明書であるから、証明する事実は、証明書作成より過去の事実でなければならない。遺産分割協議成立が、証明書作成に先行していなければならない。

言い換えると、証明書作成行為自体が、遺産分割協議を成立させる書面行為となることは、論理的にありえない。

ここでは、半強制的に口頭主義を採用せざるを得ないのである。

 

そこで行内規定を見てみよう。

行内規定によると、最後の証明書の日付が、遺産分割協議成立の日だという。

では、それ以前に作成された証明書は、なんだったのか?

まだ成立していない遺産分割協議を証明した証明書ということになる。これは、明らかな矛盾だ。

行内規定で、どう補っても、修正できない非論理性だ。

その旨を電話口で説得し、あなたが何を言おうと、その行内規定が間違えている。当方は、その行内規定に従う意思は無い。今の書類のママで手続を完了させてくれ。

と突き放した。

電話口の担当者レベルでは解決できない問題だろう。痛めつけられて可愛そうに。

あなたが悪いんじゃ無い。悪いのは行内規定だ。でも、電話してきたのはあなた。運は悪かったね。

「上司と相談させていただきます」と電話は切れた。

 

それから数時間後、きらぼし銀行から電話があった。

「先ほどの件ですが、今の書類で手続を進めさせていただきます。15日には決裁がおりて送金手続、同日中にご入金。同日中に通帳をご返送しますので、翌日か翌々日にはお手元に届くと思います。」

 

な、こういう風に、非弁であっても、論理的に話せば、正義は勝つんやで。

非弁を馬鹿にしたらイカンゼヨ!