#マンション管理費 #未納金 #会計処理

諸事情を割愛して、事案を簡略化しました。

簡略化のため、修繕積立金は無視。

分譲マンション1棟10部屋

建築初年度。3月末竣工。

4月から入居。幸いにして全戸完売。全戸入居。


管理費=各部屋均一1万円/月、当月分前月払。

4月分管理費は前月(3月)に支払う。

は、4月入居で無理なので、

4月に2ヶ月分を払って貰った(どこからも異議なし)

 

決算期は、4月1日から3月31日

翌年4月になったので、

第1期の決算報告をしなければならない。

 

 

(検討事例❶)
4月の始まりから、最後の翌年3月まで、10部屋とも健全に支払った。未払いも過払いもない。

事例簡略化のため、この1年間、管理費は1円も使わなかった。支出ゼロ。と仮定する。

 

初月(4月)に2ヶ月分入金、

5月から翌年3月まで規約通り前月払が実行されると、

第1期(12ヶ月間)に13ヶ月分の入金がある。

10部屋✖13ヶ月=130万円の入金。

 

この13ヶ月分=130万円を

会計上、①②の2つに仕分けして処理する。

 

①12ヶ月分は、第1期の管理費収入120万円。

支出ゼロなので、

期末財産(正味財産)は120万円となるはずである。

 

②1ヶ月分(3月入金の10万円)は、

第2期(4月)分だから、第1期管理費収入ではなく、

あくまでも預かり金(前受金)

 

これを貸借対照表にしてみると、↓ となる。

 

貸借対照表(第1期3月31日)

資産の部                        負債の部       
現金・預貯金 130万円      前受金    10万円
未収金      0万円      正味財産  120万円
    計  130万円     計  130万円

 

これに、疑問の余地はないと思いますが
大丈夫でしょうか?
間違えてますか? 

 

 

(検討事例❷)

4月の始まりから翌年2月まで、10軒とも健全に支払った。未払いも過払いもない。

しかし3月は、101号室が4月分を払わなかった。

他の9部屋は、正しく支払った。

事例簡略化のため、この1年間、管理費は1円も使わなかった。支出ゼロ。と仮定する。

 

<会計担当理事Aの会計処理
①3月中に支払った9部屋9万円は、

事例❶と同様に、前受金として計上する。

3月中に支払わなかった101号室分1万円は、

未収金1万円を計上する。

③現預金は101号室が1万円未払いなので129万円

④期末資産(正味財産)は、2月までの支払いで第1期分(12ヶ月分)は完全徴収できた(かつ支出ゼロ)なので、120万円になる。

 

 

会計担当理事Aがこれを貸借対照表にしました。

 

貸借対照表(第1期3月31日)

資産の部                        負債の部       
現金・預貯金 129万円      前受金     9万円
未収金      1万円      正味財産  120万円
    計  130万円     計  129万円

 

 

 

<理事長Bのチェック>

会計担当理事Bを呼びつけて

①銀行通帳の残高が129万円なのは確認した。

②101号室が1万円を支払っていないので1万円未収金は理解できた。

③101号室以外の9部屋が、4月分を前払いしたので、前受金9万円を計上したのも分かる。

④第1期として120万円の管理費の入金があり、支出がゼロだから、正味財産120万円もそのとおりだと思う。

★しかし、資産の部と負債の部の合計金額が一致していないのは、なぜだ。

これが一致しない貸借対照表を、管理組合総会に提出することは出来ない。原因を究明してきたまえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

101号室の3月支払い(4月分)を未収金に計上したのは正しいか?

4月分なのだから、第2期の管理費であって、第1期に未収金を計上するのは、間違いではないか?

間違いではない。

 

会計学上、現金主義と発生主義がある。

現金主義とは、文字通り現金の変動をもって会計処理する方法である。

他方、発生主義とは、債権や債務の発生・消滅という目に見えないモノを、会計処理する方法である。

現金が変動すれば、それの効果として、債権や債務が発生・消滅するので、それも会計処理されるが、例えば月末の到来という現金とは無関係な事象により、管理費支払い請求権という債権が発生したりするのが特徴である。

 

現金主義の方が、見た目が簡単であるが、

発生主義の方が、経営状態の実質を見ることが出来るので、こちらを推奨する。

企業会計は、発生主義によって処理されている。

 

 

例えば、101号室の未払金。

現金の変動はないのだから、現金主義だったら、会計上、なんの表記もされない。

101号室が未払い状態であり、解消しなければならない問題点である。このことが見過ごされてしまう。

発生主義なら、未収金を計上することにより、問題点を明確に把握できる。

 

各部屋が払った4月分前払。

現金が変動しているから、現金主義でも、会計処理上、記載される。

便宜上、管理費の支出ゼロにしているが、実際にはそのようなことはなく、現実には毎月なにがしかの管理費を必要とし、支出が発生する。

事例❶で言えば、現金主義だと130万円の収入があったことになる。

第1期に130万円を使い切ってしまうかも知れない。

しかし、130万円の内、10万円は第2期の4月分ですよ。と分かれば、10万円には手を付けず、第2期に引き渡すことが可能になる。

だから、前受金という科目を作って、区別しておくのが発生主義である。

 

では、事例❷の会計担当理事Aの作った貸借対照表は、何が間違えていたのか?

 

未収金1万円は、本来は3月31日までに支払わなければならない管理費で、将来、101号室に支払って貰うものである。つまり、将来の1万円札である。

だから、未収金は、負債ではなく、資産(将来資産)に計上されるのである。

 

他方、会計担当理事Aは、9部屋分9万円を前受金に計上した。

この9万円は、4月分=第2期分だから、第1期の間に使ってはならないお金。

預かり金である。第1期からみると、第2期に引き継がなければならない(返済しなければならない)金額である。だから、負債の部に計上される。

 

このように、未収金も前受金も発生主義から生じる架空の数字である。
現金主義では、記載されない科目である。だから、わかりにくい。

 

会計担当理事Aは、一つのミスをした。

 

101号室の未収金を計上したときに、相応する会計処理をしなかった。

 

お!なんか難しいことを言い出したぞ。

まあ、聴いておくんなまし。

 

ある企業が、銀行から10万円を借りているとする。

銀行に10万円を返済した。という1つの事実は、会計上「必ず」2つの記載を必要とする。複式簿記という奴だ。

2つとは

 「現金が10万円減った」

 「銀行の借金が10万円減った」

の2つである。

相対する2つの会計上の処理があって、資産の部と負債の部が均衡が保てるのである。

どちらか片方しか会計処理しないと、今回のような総集計が一致しない事件が発生してしまう。

複式簿記は、事故を未然に防ぐと同時に、ミスがあったら発見できるシステムなのである。

 

例えば、102号室が、3月に4月分1万円を支払った。という一つの事実。

これに対して、会計処理は2つ。

現預金1万円増加。前受金1万円の計上。

というふうに連動している。

 

では、101号室、3月分未払い(正確には、未払いのまま、3月31日を過ぎてしまった)という一つの事象。

必要な会計処理は2つ。

1万円の未収金の計上を行った。

もう一つは・・・・・やってない。

だから、最終結果に1万円の誤差がでてしまった。

 

だったら、もう片方は、何をすべきだったのか。

前受金1万円の計上である。

え?

だって!

1万円、貰ってないじゃん。

前受けしてないよ!

だから、発生主義は難しい(理解しちゃえば簡単なんだけど)

 

貰っていない1万円を未収金に計上した。

将来の1万円札だからだ。

銀行預金には入っていないが、1万円の価値がある。

だから、資産の部に計上した。

言い換えると、銀行預金に1万円入金されたのと同格の扱いをした。

ということは、反対側も同等の扱いをしなければならない。

それは・・・102号室の1万円入金と同等に扱う。

そう!それだ!!

前受金1万円の計上。

これで、資産と負債のバランスが保てる。

つまり、101号室の未収金の計上の相方として、1万円の前受金も計上する。

前受金は、合計10万円になる。

 

正しい貸借対照表は、下記の通りだ。

 

貸借対照表(第1期3月31日)

資産の部                        負債の部       
現金・預貯金 129万円      前受金    10万円
未収金      1万円      正味財産  120万円
    計  130万円     計  130万円