自筆遺言書保管制度

さてさて、

叔父さんが、ようやく遺言書を書く気になった。

その理由は、癌になって告知されたからだ。

あまり良いキッカケではないが、とにかく懸案の遺言書を書いてくれるのはOK牧場だ。

 

叔父さんの家から、最寄りの公証役場までは遠い。
叔父さんの家から最寄り駅まで、僕の足で10分。
叔父さんだと、何十分かかる分からないから車移動だな。
そこから電車で20分。
電車を降りてから、公証役場までも、同じくらいの距離。

杖を使って、歩行困難者の叔父さんには、途方もなく遠い距離だ。

現実的には、従姉妹が車で運ぶことになろう。

面倒くさい遺言書だったら、公証役場を使わざるを得ないと思っていたが

今回は(いろいろと葛藤の末)「妻に全財産を相続させる」だけの単純なものになる。

それなら、自筆証書でも良いではないか。

 

その場合、表題にもある新制度を利用してみようと思っていた。

自筆遺言書保管制度の魅力は

❶受付時に、遺言書の形式審査をしてくれる。

❷保管が万全で、火災や盗難の心配がない。

❸検認手続きをしなくて良い。

❹遺言者死亡後に相続人全員に通知してくれる。

などである。

 

個人的には、❹に興味があった。

相続案件を処理したことがある弁護士なら、誰しも、相続人確定作業に手間がかかる経験をしたことがあるだろう。

関係者が健在で相続人は分かっていても、戸籍類を整えるのが大変だったりする。

それを法務局が肩代わりしてくれるなら、なんとありがたいことか。

 

今日、法務省民事局に電話をして尋ねてみた。

回答「遺言書を預けるときには、相続人がわかる資料は、何一つ必要ありません」

よっっしゃー!これで楽ができるぞ!

「あれ?」

「預けるときは」って言わなかったか?

恐る恐る聞いてみた。

「では、いずれ必要になると?」

回答「はい。遺言者が亡くなって、法務局が通知するときには、資料を出して頂くことになります。」

「遠い親戚が死亡して、思いがけずに相続人の順番が回ってきた。なんてときには、他の相続人が分からないこともありますよね。」

回答「そういうときは、弁護士さんとか司法書士さんとか専門の人に相談して下さい」

 

け! 結局は、それかい。

❹には、全く魅力がないことがよく分かった。ということを読者の皆様に、ご報告いたします。

 

なお、遺言書を法務局に預けに行くには、本人が必須だそうです。

叔父さんは、癌で病床にいますから、法務局に連れて行くのも難儀なので、自筆証書を書いてもらって、封をして、後で家裁で検認手続きをします。